100年企業がソーシャルレンディングを使いこなす。山八商事社長が語る「商業不動産事業」の勝算
(画像=PIXTA,『ZUU online』より)

1922年(大正11年)創業の100年企業に山八商事がある。綿布販売を祖業とし、現在はホームファッション事業、不動産事業、再生エネルギー事業を主軸に展開する。掲げる企業フィロソフィーは「人生を豊かにする会社」だ。100年の歴史の中で、人々の大きく変化するライフスタイルに寄り添いながらビジネスを展開してきた山八商事が、いま主軸に据える商業不動産事業に対し、ソーシャルレンディングを積極的に活用し始めている。社長の鈴木俊介氏が、会社のルーツと100年続く企業の競争力の源泉、そして、新たな取り組み「ソーシャルレンディング」への期待について語る。

目次

  1. 歴史ある山八商事、事業のルーツと企業の競争力
  2. 主力の寝具インテリア事業から、不動産事業へ舵を切ったその理由
  3. ホームファッション事業と商業不動産事業、その相乗効果とは
  4. 山八商事の不動産事業の目指すもの
  5. 100年企業がソーシャルレンディングに取り組む理由
▽お話をお聞きした人:鈴木俊介

1977年、愛知県蒲郡市生まれ。慶応大学卒業後、家業の山八織株式会社に入社。2001年に山八商事株式会社の代表取締役就任、グループ再編において両社を統合、商業不動産開発事業の拡大を目指す。2015年、繊維事業の構造改革と不動産事業の拡大のために本社機能を名古屋市に移転。物件別子会社モデルの開発と発展を通じ、不動産投資に対するリスクの開示や透明性の向上など業界における課題の解決に取り組んでいる。

歴史ある山八商事、事業のルーツと企業の競争力

――山八商事の事業のルーツと、不動産事業開始のきっかけについて教えてください。

100年前に綿布販売問屋としてスタートし、毛織物工場を持って製品製造、卸売業を行って参りました。1970年代半ばまでは繊維業のみを行っておりましたが、1979年(昭和54年)に工場を移転させるタイミングで遊休地が発生したことが、不動産事業の開始につながりました。1981年に、当時の株式会社ヤオハン(現・マックスバリュ東海株式会社)と共同でショッピングセンターを立ち上げたのが不動産事業の始まりです。

私が社長になった2001年からは、他社の遊休地や他の大型テナント撤退後の土地を購入して、商業不動産の開発を始めました。それまでは自社の遊休地の活用だけで、土地を外から購入することはありませんでした。

本社のある愛知県蒲郡市内に物件のポートフォリオが片寄っていたので、市外の土地や物件を購入・開発することで、ポートフォリオの再構築を行うことが狙いでした。現在は、地元のショッピングモールの運営や、北は北海道、南は大分県に至るまで、物件を所有しています。

▽山八商事の事業内容

(画像引用:山八商事経営資料より)

 

――創業から5代目として、山八商事の強みと弱みをどのように見ていますか?

当社の強みは、時代に合わせて主力商品を変化させてきたことです。創業当時はふんどしやさらしが利用されていた時代で、木綿製品が主力でした。大正デモクラシー明けの洋装への変化に合わせ、羊毛のスーツ生地などの毛織物、戦時中は毛布など民生品を軍事品に転用したり、その後こたつ布団などを主力として手掛けたりしました。

そして、生産を海外移転しないとコストに見合わなくなったタイミングで国内生産に見切りを付け、日本国内で企画、意匠考案を行った商品プランを主に中国に生産委託する形式に、切り替えていきました。このように時代の要請に寄り添って、100年たったいまも生き残っています。

一方、克服すべき課題は、地方企業ゆえの知名度の低さでしょうか。有名ライセンスブランドや大手量販店のOEM(受託製造生産)業務の比率も高かったので、社名や自社ブランドは消費者に触れる機会が少なかったといえます。消費者への直接的な訴求力の低さは、今後の課題だと実感しており、消費者認知度を上げることも目的として、融資型クラウドファンディングであるソーシャルレンディングを利用しています。

――100年の歴史を持つ企業として、どんな経営戦略をお持ちですか。

こだわる部分とこだわらない部分をはっきりさせています。例えば、時代背景の変化から、さらしやふんどしの需要が減る中でも、そこに固執しませんでした。現在のホームファッション製品は、寝具とインテリア用品がだいたい半分ずつの構成になっています。

昭和から平成にかけては、布団や座布団、こたつなどのカバー製品が主力商品でしたが、現在は睡眠と健康の重要性が見直される機会も多くなっており、寝具でいえば枕やマットレスが重視されています。

インテリア用品に関しては、かつての主力はカーテンやクッション、ソファカバーでしたが、いまはライセンスを取得した北欧ブランド風の製品も製造しています。

主力の寝具インテリア事業から、不動産事業へ舵を切ったその理由

――2014年から不動産事業が拡大していますがきっかけは?

不動産事業のスタートは1970年代後半からなのですが、当時、製造業は海外生産へとシフトしていきました。最初は韓国、次に東南アジア、現在は中国と生産拠点が目まぐるしく変遷してきました。価格競争が激しくなり、国内生産に戻る時代はもう来ないと判断しました。そこで、工場の跡地を不動産事業に転用したわけです。

――なぜ札幌、浜松、静岡へと展開されたのでしょうか。

本社が蒲郡市ということもあり、本社周辺に物件が集中してきたので、リスクの分散を目指してポートフォリオの見直しを行いました。ビジネスモデル上、遠隔地でも投資・賃貸管理対応できる体制を作り上げ、投資対象範囲を広げました。

繊維製品は北海道から沖縄まで販売していますので、比較的地理的な情報が当社には集積されております。流通店舗も同範囲なので、流通店舗に強い地域と弱い地域の選別にあたり、売上データを参照したり取引先とのやりとりによって情報収集したりしております。遠隔地でも投資対応できるように開発段階からテナント企業と綿密に協議することにより、遠隔地物件においても極力現地対応する必要がない賃貸方式を採用しています。

――その取り組みから得たビジネス上の知見はありますか?

日本の人口減少が進む中、今後も都市基盤の維持が見込まれる流通店舗に強い地域や、ビジネスとして成り立つテナントの組み合わせ方法などの情報を蓄積しています。各業界の上位企業とテナント契約を締結しておりますが、繊維製品の取引先のある地域であれば、さらに現地の情報を効率的に収集することができます。

大型商業物件の開発において、いまでは当社から提案営業を行わなくても、テナント側が当社と開発したいという物件の持ち込みが4割程度あります。当社が自ら投資物件及びテナントを探さなくても、この場所で営業するので物件を取得して賃貸をしてほしい、というお声掛けとなっており、営業面において継続取引により蓄積された信頼がうまく循環してきていると感じます。

ホームファッション事業と商業不動産事業、その相乗効果とは

――不動産事業が拡大する中で、ホームファッション、繊維事業はどんな位置付けですか? また、それらの相乗効果を教えてください。

ホームファッション事業、繊維事業と不動産事業は、関連した取り組みがあります。例えばドン・キホーテにテナントに入ってもらいながら、売り場には寝具やインテリアなど当社の商品を卸すといった直接的な取引があります。

同様に、テナントに入ってもらっている自動車ディーラーとの取り組みでは、メーカーのロゴをお預かりし、来店客に対してのノベルティとしてタオルや雑貨を当社で製作する取り組みが生まれております。

例えば、スウェーデン発祥のボルボに関連付けて北欧テイストのノベルティを制作し「集客や商談につながるイベントで使ってください」と提案し、採用していただきました。繊維製品含め雑貨に関する話であれば当社は何でも相談に乗れるので、タオルや傘のノベルティなど予算に応じたものを提案できます。

当社は流通店舗に適している沿線や同地域の総合スーパーの販売力の違いなどを把握しているので、出店するならこの地域、といった判断を肌感覚でテナントと共有することが可能です。

通常のビジネスではお金を支払う方がお客さまであり、取引先においてもお金を支払う方が、立場が上になることが多いと感じます。しかし、不動産に関しては、権利関係の意識が強く、「オーナーさん」や「大家さん」などと言われるように、お金をもらう方が「さんづけ」されます。この不動産特有の取引関係により、お互い対等なポジションで、真剣に出店について議論を行うことが可能になります。

当社のような地方の中小企業でも、商業不動産開発においては上場企業である大手量販店と対等にお付き合いができます。その関係性を、繊維事業のビジネスにも活用しております。

そして、社内においては、不動産事業も繊維事業も事務所内の同じスペースで業務に従事しており、事業部間の壁が低いことが特徴です。

>>>商業不動産に特化する山八商事のソーシャルレンディングについて、詳細を見る

山八商事の不動産事業の目指すもの

――今回のソーシャルレンディングの資金用途にも該当するように、商業不動産に特化していますが、その狙いは何ですか?

一般に賃貸用の不動産と言えばオフィスとレジデンス(住居)が高い比率を占めますが、当社はその分野には手を出さずに商業不動産のみを手掛けています。自社に蓄積しているデータが商業施設に最も活用しやすいからです。

商業不動産を開発し、テナントの店舗開発部などとのリレーションが作られると、何十年という関係が続くこともあります。これは、B to Bでないとできないことで、他社には参入障壁も高いと考えています。

当社は、出店攻勢をかけている業績好調なテナントを複数抱えることで、さらに次のリレーションを作っていきます。

通常のファンドなどでは、商業施設の開発後には賃貸借契約書に基づく賃料の支払いが継続的に発生するだけで、その他のコミュニケーションはあまり発生しません。当社はショッピングモールを持ち、プロパティマネジメントを実施し、店舗での売上の中から賃料を頂いていますので、テナントの営業支援の重要性もしっかりと認識しております。

テナントへの営業支援は、ファンドやJリートでは実施しませんし、一般的な大家さんでは対応できません。商業不動産の運営に特化するとともに、実際に複合商業施設を運営する当社だからこそできると評価されています。

前回のCOOL社におけるソーシャルレンディングでは、当社の商業施設のテナントのドン・キホーテの商品券を出資者特典として配布しました。実際にテナントの商品券を特典として配り、その結果ドン・キホーテに売上を還元します。テナントは、自社の商品券を買って配ってくれるオーナーとして、高く評価していただいています。

▽山八商事の展開する商業不動産施設例:クラスポ蒲郡

(画像=クラスポ蒲郡)

 

コロナ禍でも賃料の減免を受けずに対応できたのは、普段からテナント企業とこういったリレーションを維持しているからと分析しております。これらが商業不動産に特化している理由です。

>>>商業不動産に特化する山八商事のソーシャルレンディングについて、詳細を見る

――ドン・キホーテ以外にプロパティマネジメントとして支援している事例は他にありますか?

ヤマダ電機とニトリは商品券の利用にて、中古自動車販売のネクステージは、社内自動車ローンの設定による購入支援をしています。テナントには、当社社員用の特別割引プランを組んでいただき、社員の多くが商品券やお歳暮の品をテナントで購入しています。

――開発した不動産物件について、イグジットとして不動産M&Aおよび小口化商品を開発されています。詳しく教えてください。

親会社である山八商事の下に、その投資案件のみを扱う個別の法人をつくることを社内では「物件別子会社方式」と呼んでいます。物件別子会社を設立し、賃貸運営して、最終的にM&Aで売却するのが、われわれのビジネスモデルです。

基本的に不動産の紹介では、重要事項説明をしなくてはなりません。さらに投資用の物件は、過去の建物用途、開発内容、期間、どのような投資をして現在のテナントを誘致し、メンテナンスを経て現状に至ったのかの経緯を説明することが重要と考えます。

しかし、普通の不動産売買ですと、これらの内容をすべて重要事項説明に盛り込むことは難しいのが実情です。不動産M&Aでは譲渡前にデューデリデンス(企業詳細調査)の手続きがあるので、これらすべての情報を開示します。

テナント企業には引き続き新しいオーナーと良好な賃貸借関係を維持してもらえるよう、次のオーナーには経緯を十分理解してもらった上で物件別子会社の購入をしていただくスキームを用意しております。

このように、トラブル防止も踏まえて、物件売却ではなく不動産M&Aという形式で売却をしています。不動産業界の「悪徳業者がいる」「一般人を食い物にする、胡散臭い」といわれるイメージを極力解消するためには、企業情報すべてを開示できる不動産M&Aが最適な手法と考えています。

さらに物件の売買における取得コストにおいても不動産M&Aは有利です。通常、不動産の売買には不動産取得税、登録免許税がかかってきます。

これに対し不動産M&Aであれば株式を有価証券売買として取り扱います。賃貸借契約にしても地位承継の手続きが不要で、不動産取得税、登録免許税の追加払いも発生しません。物件の受け渡しを行うのに低コストで済む手法なので、今後のビジネスのメイン手法として据えています。

今後は、大規模な不動産M&Aだけではなく、数万円単位で不動産投資を行える小口化事業にも取り組み、一般投資家からの信頼を得ていきたいと考えております。ソーシャルレンディングへの取り組みも一般投資家との接点を増やし、最終的には不動産M&Aで物件を取得いただけるように、継続した取引を構築することが狙いです。

>>>商業不動産開発に特化する山八商事のソーシャルレンディングについて、詳細を見る

100年企業がソーシャルレンディングに取り組む理由

――一般投資家との接点を増やすため、とお聞きしましたが、あらためてソーシャルレンディングで広く資金を集める理由を教えてください。

資金調達という意味では、ソーシャルレンディングの特徴である機動性を活用し、銀行の融資稟議の回答を待つことなく投資判断ができる点が有用と思っています。

ただし、全プロジェクトで4~5%の金利を負担して資金を調達するのはコスト負担が大きいので、銀行から融資を調達するタイミングまでに利用を限定するといった機動的なプロジェクト資金としての活用を期待しています。

その際に、一般投資家に対しわれわれが繊維商品の製造も手掛けているなど、当社の事業内容を知ってもらうことができます。基本的には、テナント企業とのB to Bでこの事業を継続していますが、今後、不動産小口化商品の売却の際に一般投資家に直接アクセスするためには、いかに露出を高めていくかが事業拡大の鍵を握ると思っています。ソーシャルレンディングの活用は、自社の知名度を高める効果を見込めると考え、取り入れています。

――知名度を高めていくことによって投資家の裾野を広げられるということですが、想定している具体的なストーリーはありますか?

単体で知名度を高めるのは難しいですが、われわれはさらなる成長を目指すために、システム投資、人材採用、内部管理体制の構築といった取り組みを始めています。「ソーシャルレンディングで関わった会社がここまで成長したか!」とか「そこまで積極的な会社であるならば1万円だったら投資、支援をしてみてもいいかな?」と投資家に実感していただくことを目指している、といったイメージです。

また、通常、個人が不動産投資をする場合には、投資物件の入居者に対して愛着を持つということは皆無と思います。一方、COOL社で組成しているソーシャルレンディングでは、われわれの開発している商業不動産に対して1口1万円から応援投資をしていただき、商業施設に出店しているテナントのことも知っていただく機会になっています。

ソーシャルレンディングの特性を生かし、投資先の商業不動産に加えて店舗に親しみを持ち、来店のきっかけにしてもらいたいです。そのテナントの売上がわれわれの賃料収益になると同時に、ソーシャルレンディングの参加者への安定的な利払いになるといった好循環になると期待をしています。

>>>商業不動産開発に特化する山八商事のソーシャルレンディングについて、詳細を見る

▽お話をお聞きした人:鈴木俊介

1977年、愛知県蒲郡市生まれ。慶応大学卒業後、家業の山八織株式会社に入社。2001年に山八商事株式会社の代表取締役就任、グループ再編において両社を統合、商業不動産開発事業の拡大を目指す。2015年、繊維事業の構造改革と不動産事業の拡大のために本社機能を名古屋市に移転。物件別子会社モデルの開発と発展を通じ、不動産投資に対するリスクの開示や透明性の向上など業界における課題の解決に取り組んでいる。

(提供:ZUU online

おすすめの記事